第2章 黒龍の苦悩の一日
『アレックス、患者だ』
が寝室のドアを開くと同時に飛び起きるアレックス。懐かしいなといった余裕の表情に腹が立つが患者は無視できない。
「野狗子関係じゃないのか」
『ただの性病だ。後でアニタに連絡しよう』
と名乗る女は未来の技術者だっただけあって看護師として使える知識と技量があった。というか以前アレックスに憑依していた時の知識や経験も持っているらしい。
『無論全てではない。ごく表面上の知識だからアレックスが正しく診断し処置する事が望ましい』
「お前……仮にも女の体ならそれらしく話したらどうだ」
俺を惚れさせたいんだろうと言いかけて寒気がして止めた。まるでそうしたいようだ。これも未来からの干渉か。
夜梟はきょとんとした顔で
『君はこの話し方が一周回って愛らしいと言っていた』
「そういう気色悪い話はやめろ」
確かに目の前の女の見た目は悪くない。アニタがウチで働かないかと声をかけるくらいには。しかし中身は夜梟、未来人という化け物なのだ。
『診察が終わったら朝食を摂ろう。アレックスが好きなスープを用意してある。それから封印の確認と銀月の』
「……そういえばお前は妊婦だったな」
信じられないことにアレックスとの子どもがいると夜梟は主張している。腹は膨らんでいないがそうだ、と夜梟もあっさり認めた。
『ただし私は時空転移している。私自身もお腹の子も今の時間の流れの影響を受けない』
「お前が未来に戻るまで成長しないということか」
『その通りだ。楽しみにとっておいてほしい』
何故この女はアレックスが我が子が産まれることを楽しみにしていると思っているのか。未来の自分がどうなっているのかアレックスは不安になる。野狗子に脳を吸われたのではないか?