第56章 そして迎えた当日の朝
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2025年3月15日
緊張しちゃって…眠れなかったら
どうしようかって心配してたけど
旦那さんとの…寝る前の運動の
お陰なのか…夜は良く寝てたみたいで。
気が付いたら…朝になって居て…。
旦那さんがお風呂にお湯を
張ってくれていて…
部屋の中に漂っている
コーヒーの香りで目を醒ました。
「んんっ……朝…ぁ?…」
もぞもぞと…開いたカーテンの間から
暗い室内に射し込む光から
逃れる様にして…布団を被って
そのまま寝ようとしたが…ハッとして
ガバッと巴が起き上がると
バスローブ姿で水を飲んでいる
旦那さんと目が合って…。
「港斗!!外ッ……お天気…っ…」
と…私が…旦那さんに…尋ねると
その表情はいつもの笑顔じゃ
なかったから…自分の目で
結果を確かめるまでも無かったのだが…。
天気予報は…悲しいかな
的中率100%だったみたいで。
予想通りの…曇天がカーテンの
向こう側の神戸のベイサイドの
景色の上に広がっていた。
ここからは…モザイクも見えるし
モザイクの前に停泊している
コンチェルトの姿も見る事が出来る。
今日が…晴天の青空だったら
どんなに良かったか…と思いつつ
お天気ばかりは…泣いても…
怒っても…私にはどうにもできないので…。
『ダメですよ…?巴…』
旦那さんがそれだけ言って
ぎゅっと…私の身体を抱きしめてくれて。
ぎゅっと…旦那さんの着て居る
バスローブを…私は握りしめた。
『目が…腫れちゃいますからね…?』
「……う…ん、…そ、それは
自分でも…ダメって分かってる…けど…ッ」
泣いちゃダメって分かってるし、
泣いてどうこうならないのも
自分でも…大人なんだし分かってる…。
『まだ…空も…泣いてないんですから、
巴が…先に泣いちゃだめですよ…?
泣くのは……ご両親への感謝の
手紙を読み上げる時で良いです…よ?』
ね?と…言われて顔を上げると
自分だって…いつもの…
あの…太陽よりも眩しい
イケメンオーラ全開の笑顔じゃない
アンニュイな感じの顔してるのにっ…。