第35章 リバティ ✢
手を繋いで近所のコンビニに向かう。
夜空には綺麗な満月が出ていて、足を止めてふたりで見上げた。
「夢はやっぱ、お月様みたいにキレイだ!」
ネックレスの満月に、チュッとキスを落とされる。
「満月はね、夢の力と可能性をフルに発揮してくれるんだ!」
「ありがと。廻は私の太陽だね。」
照れくさそうに“へへっ”と笑うあどけない表情(かお)。
心臓がキュッとなるような愛おしさが込み上げて、道端でギュッと抱き締めた。
「明日……楽しみだね。」
「うん♪楽しくサッカーしてくるね。」
眼を瞑って蜂楽の胸に顔を埋める。
ホント言うと私ね、まだ複雑なんだ。
廻の楽しいサッカーを、誰よりも応援したい。
廻の楽しいサッカーを、誰よりも信じたい。
だから明日は笑顔で“いってらっしゃい”するって
そう決めたはずなのに……
得体の知れない寂しさに、身を引き裂かれそうで───。
「なに買うなに買うー?」
ペットボトル飲料のコーナーにターッと駆けていき、ちゃっかり炭酸水を持ってくる蜂楽。
本当に、自由だ。
「パッピコ食べる?」
いつか蜂楽がくれたアイスの名前が口から出る。
縛られてた家訓であまり食べられなかった冷たい魅惑を、私はナチュラルに手に取った。
「一緒に食ーべよっ♪」
自由な選択は、私の可能性をこれからも広げていく。
自ら掴んだこの甘くて小さな開放感を噛み締めて、帰り道ふたりで“かんぱい”をした。