第19章 お守りみっつ
「……廻のばかぁっ!皆の前でっ、泣いちゃう、よぉ……!」
「嬉しい時には泣けばいーじゃん!夢ちゃんが俺に言ったんだよ♪」
ポロポロ溢れる私の涙を、蜂楽は指で拭ってくれた。
蜂楽に出逢ってから、私はすっかり泣き虫だ。
「お守り、効果バツグンだったね♡」
ミサンガ、髪型、甘いキス。
みっつのお守りは、文化祭を最高の日にしてくれた。
めちゃくちゃだった心は……クリアになる。
生徒会長って、一体なんなのかと思ってた。
存在意義も、自分がやる意味も見出だせず……
言われるがまま動く学校の犬。
ひとりでは、その考えは一生変わらなかった。
でも蜂楽が今日、それを書き換えた。
今日が会長やってて……一番楽しい日だ。
蜂楽はなんだって“楽しい”に変えてしまう。
「最後に、受け取って?夢ちゃん。」
「ん?」
「俺からの御褒美(プレゼント)♪」
全校生徒が集まるグラウンドの、ステージの上。
首を下に向けた蜂楽がキスした。
昼間、お互いしてしまった“違う人”との口付けを打ち消すように。
せがんでも貰えなかった愛情表現を、丁寧に刻むように。
しっかりと強く口付け、マイクを握ったままの手を腰に当てられた。
皆が大きく沸く声は遠く聞こえ……
流していた涙は、この瞬間に乾く。
“ありがとう、廻”
プレゼントのお礼を心の中で言った。
眼を閉じてキスに没頭する蜂楽に合わせて……
私も眼を閉じて、慣れたこの唇だけを受け入れた。