第1章 つよがり いいわけ かわいい子
「じゃあ俺から質問、10年ちょいの重たい愛を受け入れる気は夏乃にある?」
ずるい聞き方。
本当にずるい。
「私仕事人間だけど」
「知ってる」
「いじっぱりだよ」
「それも知ってる」
「可愛げもないし」
「俺の告白に顔真っ赤にしてんの可愛いじゃん」
「…………近くにいて、って我儘言っちゃうかも」
「そん時は飛行機で帰ってくる。すぐに行けない時は電話とかSk○peとか色々対策考えるし」
そこまで言った夜久が急に笑いだすから訳が分からずに首を傾げれば、笑みで細められた瞳がこちらを向いた。
「会えない時のことまで考えてくれるくらい、もう俺のこと気になってんじゃん。」
自分でも気が付かなかった心の内を見透かされ、頬どころか顔中が赤い。いや、無理。本当無理。
無駄だとわかっているが手のひらで顔を覆うと、その上を柔らかな唇が触れる。
「俺と付き合ったら超遠距離になっちまうけど、付き合って?」
ストレートな物言いは流石夜久。
少しだけ指の間を開くとくりんとした瞳が訴える。
信じて、みたい。
そう思うけれどいじっぱりな私は素直になれない。
だから。
「ロシア美人と浮気なんてしたら許さないから。」
顔から手を離し飛び込むように抱きつくと、照れた気持ちを誤魔化すように伝えれば、夜久は乾いた唇をペロリと舐めた。
「浮気する気すら起きないくらい好きだって上書きしながら教えてやるよ。」
抱き寄せられ口付けが降ってくる。
その唇の熱を信じたくてこちらからも唇を押しつければ、そのまま暖かな愛情に包まれたのであった。
end