第4章 つよがり いいわけ あやうい子
華やかなスポーツの祭典も終了。夜久は華やかなパリからホームチームのロシアに戻り再び活躍をしている。
また、私の方も怒涛の1ヶ月を終え、通常通りのやや忙しいくらいの仕事量に戻った。いや、少しテコ入れは入ったな。
私の受け持つチームの疲労困憊ぶりと夜久による私の強制自宅送還を見た周りのチームの方達が少しずつ仕事を請け負ってくれたのと、上に掛け合ってくれたおかげで現場の疲労ぶりがやっと伝わったようだ。少しずつ改善が見られ、ある程度の余裕が出るようになった。
本来であれば私が上に掛け合わなければならなかったのだが…それで周りに礼を言えば周りが、大丈夫、こっちも頼れ、と諭される始末。
もう少し肩の力を抜かなければと反省した。
そんなことを思いながら仕事をしていれば、外部からの急な入電。最近は社外の方には仕事用のスマホの連絡先を教えているためそちらに来ることは珍しい。怪しい電話…?と思い連絡を取るとそれは意外なところからだった。
「もしもし、お電話変わりました。」
「お、夏乃。よかった、オレオレ。」
「……俺俺という名前の知り合いはいないため、お電話切らせていただきます。」
「ちょっと待て、わかってやってるだろ。同級生の黒尾!」
声で誰かなんてわかっているが、流石に職場へ連絡はしてこないでほしい。前に比べたらスマホを確認する時間も取れるから…
「流石に職場に連絡していい間柄ではないと思うよ、個人的な用事はスマホに連絡入れてよ。」
ため息混じりで伝えれば、電話の向こうの黒尾の声が少しだけ低くなる。
「悪い、こっちも仕事でかけてるんだわ。
椎名さん、職場の上司の方含めて、できるだけ早く話できる場を設けてほしい。今そっちの会社に向かってる。」
黒尾が仕事絡みで職場を通じて連絡…
十中八九、夜久絡み。それも急ぎということは悪いことが起こったということ。
深いため息を吐き再び受話器に向かう。
「…30分後、でなんとかなる?なんとか会議室と上司押さえるのと、受付にも伝える。」
「ん、感謝。悪いな。」
ひと言ふた言会話をし電話を切ると、落ちる気持ちが肩を重く感じさせる。しかし約束をしてしまったからには準備をしなければいけない。
落とした肩を上げパソコンを閉じるとそのまま上司の元へと向かった。