All is Dream Box【春パワー全開】*短編集
第4章 林和差/散らぬが星の八重桜(お相手・山崎)
急ぎ足でやってきた食堂車は、ほぼ満席だったけれどなんとか窓際の席をゲットできた。
「よく見えるね」
惑星の外側にガラスのような膜が張られていて、散った花びらが、砂時計のように下の方へ流れていく。
ここの桜は、一年中枯れることがない。
温度を調整し品種改良を重ね、生み出された奇跡の一本。
儚さを失った桜は、いつまでもいつまでも咲き続ける。
俺たちは食事も忘れて、桜の声に耳を傾けた。
「なんだろう…綺麗なのに、苦しそう」
ガラスの向こうに想いを馳せる彼女に、より一層切なくなって、ただ「そうだね」としか言うことができなかった。