第2章 ♢T1…看板娘♢
「…ン…」
ものすごく深い眠りだと思っていた程の眠りから目覚めた雅。しかしそこの天井はさっきまでの宿の天井とはどことなく違って見えた。
「明明(メイメイ)?体調はどうだい?」
「…へ?」
「…あぁ、少しは顔色いいみたいだね」
「あの、メイメイ?」
「ん?どうかしたかい?急に倒れるから心配したんだよ。それじゃぁ、あ、何か飲むもの持ってこようね」
そういって体格のいい人のよさそうなおばさんは雅をメイメイと呼んでそのまま部屋を後にしていった。
「…メイメイ…って…私の事?」
ふとベッドの脇にある姿見が目に入る。ベッドから体を起こして姿を映してみれば驚きのあまりに声が出なかった。
「…ーーー!?!?!?」
「あぁあ、起きて大丈夫かい?!」
冷たい水を持ったおばさんが戻って来るなり慌てた様子で雅に寄り添った。心配の傍ら嬉しそうに腰に腕を回して倒れぬようにバランスをとってくれるその女性に雅は声をかけた。
「…あの、私って…」
「2日前に突然倒れたんだよ。それからあんまり目を覚まさないから心配になって…」
「じゃなくて…ッッ…」
「それ以外に…?どうしたんだい?どこか痛むのかい?」
「…そんな事は…大丈夫…だけど…」
「そうかい?ならいいんだけど…店番はもう少し体調が整ってからでいいよ」
そう言われたが明明と呼ばれた体内の意識は紛れもなく雅そのものだった。ただ、それを話した所で何かが変わる訳でもない…そう感じた雅はそのままストンと促されるままベッドの淵に座った。
「…なにか食べたかったら下においで、ね?」
そう言い残しておばさんは部屋を後にしていった。その背中を見送りながらも雅は思考をフル回転させていた。