第10章 東と西
月島 side
着替えて体育館に行くと、日向や影山は既にスパイク練習を始めていた。影山のトスを上げる指を見て、この指で鈴木の髪に触れたのか…なんて気色悪いことを考えて振り払うように頭を横に振る。
『お疲れ様です!』
着替えた鈴木が体育館に入ってきた瞬間、影山は一瞬だけ鈴木に目線をやって、またすぐにボールを追いかけていた。影山が鈴木を気にしている様子は全くないし、その逆も然り。
その後もなんとなく2人を見てしまったが、あまりに影山と鈴木の間に何もなさすぎて、僕は自分の記憶を信じ切ることが出来なくなった。
あれは見間違いだったのか。
そもそも別に2人がどうだろうが自分には関係ないし、どうでもいいことなのだ。
『ツッキー、ナイスキー!』
「…キミ、その語呂気に入ってるでしょ」
僕は鈴木から手渡されたドリンクを飲んでまたコートの中に戻った。