第4章 練習試合
すっかりいつもの調子を取り戻した翔陽を筆頭に、みんなどんどん点を入れていく。
すごい、さっきまでのが嘘みたい!
「よかった。ね」
『そうですね!これなら1セット取り戻せそうです!』
改めて、バレーボールの試合を間近で見ていると思う。
ああ、ほんとはやってみたかったな。
床を蹴る音、ボールを叩く音、チームの声かけ、当たり前のように流れる連携、全てが昔から憧れていた。
[ピーーーッ]
気づけば第二セット終了、あっという間に取り返した。
『すごいなぁ・・・』
「おっしゃぁぁぁ!!このまま最終セットも取るぜえ!!」
みんながベンチの方に帰ってくるので、作っておいたドリンクを用意する。
『お疲れ様!すごいね!』
「別に「いい感じだよな!ぐぁーって!!!」・・・」
蛍に話しかけると、横から翔陽が飛び出してきた。
「油断すんな」
『?』
隣で聞いてた飛雄が言う。
いつも強気なのにどうしたんだろう。
「・・・多分、ですけど。向こうのセッター、正セッターじゃないです」
近くにいる龍先輩にも向けて話し出す飛雄。
正セッターじゃない?
今のチームでも結構強いのに・・・。
あれ、そういえばさっき遭遇した人ってポジションどこ「きゃぁぁぁ!!!及川さぁ〜ん」
女子の黄色い声援に思考がかき消された。
ん?及川さん?
「何だ!何事だ!」
「女子の声ですね田中さん!」
「あ、いたいた!永瀬ちゃーん♡」
『げっ』
「は」
あたしが嫌そうな声を出すと同時に蛍の表情も曇る。・・・曇ってる?
いや、なんか怒ってる。
「後で連絡先交換しようね〜!」
「なにあのアホそうな人、永瀬知り合い?」
『いやぁ、何と言うか・・・。試合前に遭遇したというか』
遠くから手をブンブン振って声をかけてくる及川さんをスルーして蛍に説明する。
何であたしが浮気見たかった時の言い訳みたいな説明をせねばならんのだ。
全く、女子人気あるならわざわざあたしに声をかけないでほしい。
「影山くんあの優男誰ですか。ボクとても不愉快です」
龍先輩もブチギレ。
嫌いそうだもんね、女子にチヤホヤされてる優男。