第3章 日+英中/甘 Tea time struggle.
日が沈んだばかりの、秋の宵闇。
西の空はまだ明るく、静かに闇に染まるのを待っていた。
すり抜けていく風は秋特有のにおいをはらんで、薄くたなびく雲をそっと押している。
その気持ちよさに身を委ねて、私は風に髪を遊ばせた。
「……もうすぐ満月ですね」
「そうですね」
心地よい静寂が、私と菊の間に流れていた。
秋は夕暮れと先人はいったが、夕暮れのあとの宵闇も素晴らしいと思う。
縁側に二人座っているだけで、幸せな気分になる。
それを増大させる作用が、秋の風にはあるに違いない。
ガッシャーン!
そんな安らぎの空間に、破壊音が響き渡った。
そしてなにやら争う声。
何事かと菊と顔を見合わせると、ドタバタと足音がやってくる。
「緑茶飲むあるよな?」
「いいやミルクティーだ!」
「どうしたんですかお二人とも」
二人の剣幕に菊が困惑している。
私と菊を置き去りに、二人がまくし立てだした。
「んな牛乳と砂糖が入った甘いだけの液体、はともかく菊が飲みたいはずないあへん!」
「いいやこの前『ミルクティーとあんこって意外と合いますね』って言ってたんだよばーか!」
「ぎゃああああなに菊にしてんだあへん!! そのうち『ミルクティーと塩鮭って意外と合いますね』とか言い出すあるよ!? 菊殺すつもりあへん!?」
「はーはっはっ! 甘いな! 爺とダイエット中とうるさいのために、低脂肪乳にカロリーハーフの砂糖だ!」
「くっ……!」
「さぁ敗北を認めろ王耀! そして我がミルクティーをありがたく頂け!」
高笑いとともに、よくわからないデレ(なのか?)を発揮するアーサー。
ていうかさすがにミルクティーと塩鮭は合わないと思う……
全く話についていけない私と菊は、アーサーと耀の顔を交互に見ることしかできない。
「……ふふふ」
追い詰められた表情の耀が、急に笑い出した。
ぎょっとして耀を見る。
彼は顔を上げて、挑戦的な笑みでアーサーを見据えた。
「ふはははは! 甘いのはどっちあへん? 低脂肪乳? カロリーハーフ? 笑止!」
なんかバトル始まりましたね。