第4章 初顕現
【 初音 side 】
翌日
いつも通りの時間に起床し、神棚のお供え物の交換や榊の水換え、掃除などをしたあと離れに戻る。遠征部隊や出陣部隊、内番についてまとめた紙をこんのすけに渡し、それを加州清光まで届けてもらう。母屋から伝わってくる賑やかな気配を感じながら、わたしも自分の仕事に取り掛かる。
特に問題もなく午前中を終えようとしたところで、慌ただしい足音が聞こえてきた。わたしが「何かあったのかな……?」と考え始めたところで、足音の主であるへし切長谷部が勢いよく襖戸を開け放つ。
「貴様! 一体どういうつもりだ!!」
「……はい?」
「しらばっくれても無駄だぞ! 何故新しい刀を顕現した、答えろ!」
「え、新しい刀を顕現……? ああ、出陣先でドロップしたのか。あれ? でも、自動顕現機能はオフに……、あれ、オンになって……あれ???」
「審神者様……。お記憶にないでしょうが、審神者様が切り替えスイッチを二度押されたのですよ……。」
「二回押した……? わたしが? なんで?」
「……。」
「………。」
「…………何とかしろ。」
「あ、はい。申し訳ありません……。」
呆れたようにため息をつくと、来たときとは打って変わって静かに部屋を出て行くへし切長谷部。彼と入れ替わるように、加州清光の声が土間の方から聞こえた。
「審神者さーん、入るよー。」
「失礼致します。」
「お邪魔しまーす!」
書類作業を一度中断し、土間と茶の間を隔てている障子戸を開ける。すると、ちょうど靴を脱ごうとしていた前田藤四郎と愛染国俊が居た。人の身を得たばかりの二振に、加州清光が靴の脱ぎ方を教えているところだった。
うわ、リアル〜〜〜!とテンションが上がっていると、わたしに気がついた前田藤四郎が姿勢を正しながら話しかけてくる。
「主君……! ご挨拶させていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい、お願いいたします。」
立ったままでは挨拶しづらいだろうと思い、その場で正座をして前田藤四郎を真っ直ぐ見つめる。
「では僕から。……前田藤四郎と申します。末永くお仕えいたします。」
「オレは愛染国俊! オレには愛染明王の加護が付いてるんだぜ! これからよろしくな、主さん!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
感動を覚えながら、二口の挨拶に対してそう返した。