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桜に導かれて【刀剣乱舞※R18】

第2章 垣間見える①



【 加州清光 side 】

 五人目の審神者がこの本丸にやって来てから二日が経った。
 同室の安定を起こさないように身支度を整えたあと、そっと部屋を出て厨へと向かう。明かりが漏れている出入口の暖簾を上げると、そこには俺が予想していた通りの二人が居た。その二人の背中を見て笑みをこぼしたあと、俺はいつもの調子で声をかける。

「歌仙、燭台切。おはよー。」
「おはよう、加州くん。」
「お早う。毎回手伝って貰ってしまって悪いね。」
「別にー? どうせやること無くて暇だし、二人で作るのに四十人分は多いでしょ。」

 そんな会話をしながら、俺はいつものように流しで手を洗ったあと、燭台切や歌仙と同じようにお握りを作る。

「それはそうなんだけれど……、三食とも塩握りだけってなると、ねえ?」
「云わんとしている事は分かるよ、燭台切。手の込んだ料理を作りたいんだろう?」
「そうなんだよ! まあでもそれは流石に贅沢だろうから、せめて沢庵を切るとかだけでも……!」
「くっ……! 分かる、分かるよ、燭台切……! 三食ずっと真白な塩握りだけなんて、全く風流じゃない……! 何か彩りが欲しい……!!」

 険しい表情をしながらも、お握りを握る力加減は間違えない二人。料理に対して多少の好き嫌いはあっても、そこまで強いこだわりがある訳ではない俺は、二人の話にあまり共感することができなかった。ただまあそれでも、同じお握りでも梅と塩じゃ全然違うよな、という意見は同じだろうから、同調しながらその会話に混ざる。

「あー、分かるー。何か具が欲しいよね、梅干しとか。」
「そう! そうなんだよ、加州!!」
「分かった。じゃあ、あの子にちょっと言ってみるね。」
「えっ!? ちょっ……、それ、大丈夫なの?」
「別に大丈夫でしょ。意地悪そうな子には見えなかったし。」
「それはそうだけど……。」
「良いじゃないか、言うだけ言ってみるくらい。今回の僕達の進言を渋るようなら、あの子も『そういう人間』だってことさ。」

 歌仙の発言を聞いて、ふと気がついた。今までの審神者は、俺達が関わりたくなくても関わらざるを得ないような振る舞いをしたり、就任して間もない頃は審神者の方から俺達と積極的に接点を持とうとしたりしていたため、割と早い段階でどんな人間性をしているのか知ることができた。しかし、今回の審神者はそれをしない。


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