第1章 就任
『花札シリーズ』
それは、遺伝子操作を受けた人間と刀剣男士の能力だけを融合させることによって生み出された、霊力や身体能力の高い人間たちのこと。彼らはその霊力の高さゆえに異能を扱うことができた。ある者は草木を操り、またある者は炎を操った。
そんな彼らを人々は『花札シリーズ』と呼び、讃えると同時に戦争の道具として酷使した。皮肉なことにも彼らはその呼称通り、戦場の徒花として命を散らしていったのである ─── 。
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22XX年
2205年、歴史の改変を目論む『歴史修正主義者』によって過去への攻撃が始まった。それから早数十年。一向に終戦の兆しは見えず、前線に立つ者たちは皆疲れ果てていた。しかし、一度戦場に送られた者が、そう簡単に現代に帰ることができるはずもなく。休職願ですら、緊急性を有するものであっても滅多に受理されなかった。多少の身体的あるいは精神的な不調程度では受理されないほどには、人手が足りていなかった。
では、そんな状況下で戦い続けている者たちはどうしているのか。
答えは簡単、行き場のない不平不満を身近な相手……刀剣男士にぶつけているのだ。
そうして、ある時を境に問題視されるようになったのが『ブラック本丸』である。
平成や令和といった時代に、残業代や給与などの賃金を支払わなかったり、パワハラやセクハラといったハラスメント行為が横行していたりなど、コンプライアンス意識が著しく低い企業のことを『ブラック企業』と総称していたらしい。
そこから転じて、刀剣男士の負傷や破壊を省みず無理な進軍を指示したり、縁のある刀を折るぞなどと脅して肉体関係を強要したりするなど、運営方法に問題がある本丸のことを『ブラック本丸』と呼ぶようになった。
そして何より、わたしが引き継ぐことになった本丸もその『ブラック本丸』なのだ。