第2章 〜夕闇の彼方より〜
夏梨side
小さな木の家の周りには、彼岸花が咲き乱れている。
家の目の前の川で身を清める。
すると家の中から声がする。おばあちゃんの姿は見えない。ただ糸を引く糸車の音と声だけがカラカラとこだまする。
おばあちゃん「夏梨。長襦袢を置いておくよ。」
これは仕事の合図。
あの子、糸を解いたのね...。
夏梨「ありがとう。おばあちゃん。」
おばあちゃん「夏梨、大丈夫かぃ?」
夏梨「大丈夫だよ、おばあちゃん」
用意された長襦袢に袖を通す。黒に赤い大きめの花が咲いている着物を綺麗に着付ける。
夏梨「一目連、骨女、輪入道、仕事よ」
「「「はいよ、お嬢。」」」
-清水side-
今日もたかられた。お金が無いと告げると万引きの事を先生にバラシに行くと言って綾瀬は立ち去ってしまった。
もう嫌だ。糸を引いてやる...!
たとえ自分が地獄へ流されてもっ!!!
目に涙をためながらありったけの怨みを込めて糸を引く-
「怨み聴き届けたり」
と空から声がして藁人形は跡形もなく消えていった。