第20章 白と黒
白
「彼女は全てを傷つけた。
その代償はこの先、
長い時間をかけて償うことになります。
許される日が来るその時まで…」
白さんは再びビニールシートを女性の遺体に
被せます。
白
「すでに察しているとは思いますが
私達管理人は山神に報告をし
遺体は基本放置をしその場を去るだけです。
それは管理人が対人間の為に在らず
自然や山神の為に在るからです。」
「(;´・_・`)」
白
「けれど最恐と呼ばれる黒箱だけは違います…
"その屍"の為に1つだけ何かをするのです。」
(黒箱って…墨くんのことよね…)
「1つだけ?」
白さんは木々を見上げながら言います。
白
「その時々、人によって違いますが
その方が1番喜びそうな事をしてあげるのです。
例えばこの女性の場合は、
水子に関してですね。
…神から仕事を任されている者が
あの世の番人に死霊を預けると、
その死霊はあの世では優先的に
早く生まれ変わると聞きます…
悲しい想いをした水子への
せめてもの手向けをされたのですよ。
母親は死神に地獄に連れて行かれたようですが
水子の気配は感じられません。
すでに生まれ変わっているか…今からでしょうね。」
「(´⊙ω⊙`)」
(墨くん…)
白
「時に黒箱は恐れられ嫌われる存在ですが、
私にしてみれば…尊敬できるお方です。
貴女も分かるはずでは?」
墨くんは時に変な事をしたり、
気持ち悪い物を食べたりするけれど
優しいところが沢山ある事を私は知っています。
白
「貴女を捨てたという事ですが、
私が知る限り今まで黒箱が愛した女性は
貴女以外存じません。
余程のことがない限り捨てるなど
するはずがないのです。
貴女は何をしてしまったのですが?」
白さんは遺体の近くに並べられていた
汚れた黒いパンプスを私に渡しながら
そう言いました。