第2章 はじまり
ある日のアツクラ。ドズルは偶然にも、そこにいたさかいさんだーこと、さんだーと出会い、パン屋と併設しているバーで二人談笑していたのだ。
しかしその和やかな雰囲気も、ドズルのとある発言で一気に変わった。
「なんかもっと面白そうな企画、ないかなぁ」
なんて。
「面白そうな企画?」
さんだーが訊ねると、ドズルはうーんと唸りながらこう答える。
「なんかもっとヒリつきそうで……イチャイチャも忘れないような企画」
「イチャイチャ」
さんだーは不思議そうな顔をしていた。それもそうだろう。ドズルの口からまさか「イチャイチャ」という言葉が出てくるとは、さんだーも思わなかったのだろうから。
だがドズルには考えがあってのことだった。
「だって、視聴者さんはさ、もっと僕らがイチャイチャしているのが見たい訳じゃん? 尊いとか、エモいとか、そういう言葉を引き出せるような企画を作ってみたいんだよね」
元よりドズルは流行に敏感であった。自分たちが薄い本にされがちなのは、薄々気付いていたからこそ、こんなことを言い出したのだ。
「う〜ん、イチャイチャ」
さんだーはますます悩んでいる素振りを見せる。三歳児らしいパンダのさんだーには難しい提案だっただろうか、とドズルが話題を変えようとした時、言葉が返ってきた。
「だったらいい案があるよ」
「え、何なに?」
ドズルはさんだーの提案を、丸々実施することにしたのである──
『○○しないと出られない部屋』