第12章 お互いのパートナーを決めましょう
悟はどんな気持ちでそう言ったのだろう。
彼の事は何でも分かっている気持ちでいた。
こんな風に離婚を拒んで、懇願するように囁く悟を。
誰が想像出来ただろう。
初めから。
虚構でも構わないから。
今の様に愛を囁いてくれていたなら。
私は結婚生活を続けていただろう。
馬鹿で無垢だった自分を。
悟なら簡単に懐柔出来たのに。
悟は変なところで律儀だった。
虚構の世界でしずくを懐柔する事より。
現実を見せて、それなりの生活を保障してくれた。
愛を与えられ無い自分の妻に。
悟なりの礼義だったのかもしれない。
自分はしずくには嘘を付かない。
その代わりにこんな自分を受け入れて、ずっと側にいて欲しい。
聞いたことの無い彼の気持ちを代弁するなら、こんな気持ちなのだろう。
不器用で。
素直で。
しずくに嘘を付かない。
不器用な私の夫を。