第2章 Episode 00
「でもエミリーったら、分隊長が居なく寂しいみたいで。さっきだって私に班長は向いてないーっ泣き言吐くんですよ」
「ス、スーザン....!?」
「だから分隊長もエミリーのこと、元気づけてあげてください!!この子を次の班員に指名したのは他でもない、分隊長なんですから...!」
「っ.....」
エミリーはスーザンのお願いに、頭が真っ白になる。これでは自分はエルヴィンが居なくて恋しがる子供みたいじゃないかと、焦りながら彼の様子を伺う。エルヴィンはスーザンの言葉に一瞬驚いた様ではあったが、すぐに真っ直ぐとエミリーの方を見据えて答えた。
「君が班長に向いていないなんてとんでもない。君は私よりも立派な兵士になる」
「あ....」
「君は何をすべきか、何が正しいのか全てわかっているだろう。現場でも皆を率いてその判断が下せる人間だと、私は信じている」
「っ....」
「...だって。よかったね、エミリー」
自分は何度、この兵士に感銘受ければ済むのだろうか。エミリーはエルヴィンの前に立つ時に、いつもそう考える。尊敬する兵士に期待を抱かれ、そこまでの言葉をもらっては、彼女ももう自分を疑うのはやめにしなければいけない。彼が掛けてくれた言葉に相応しい兵士になるべく、これからも精進しなくてはと思う。
それからすぐにエルヴィンは、会議があるからとその場を去った。エミリーは彼に貰った言葉を胸に噛み締めながら、ただ立ち尽くす。
「....顔、真っ赤っかだよ」
「え、嘘っ...あ....」
「ふふっ....分かりやすくて可愛い」
「う....スーザン....!!」
エミリーはこの日々がずっと続けば良いと願っていた。暖かく、頼もしい仲間と共に自由のために戦うことを誇りに感じていた。壁の無い空は、彼らを拒むことは無い。彼らは自由の翼と誇りを胸に、壁外へと歩み出した。