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露花の恋【進撃の巨人】

第2章 Episode 00




その日、エミリー・ハワードとその親友スーザン・ブラウンは、第86期南東地区訓練兵団を卒業した。


「_...ねっ!!エミリー!これでやっと私達も立派な兵士だよ。明日には所属兵団の決定だし、楽しみだね...!」
「...うん、そうだね」
「今年は結構調査兵団希望の子達が多いらしいの。なんでも他の地区の訓練兵団の勧誘式に、若くてハンサムな上官がいたんだって。調査兵団の倍率が上がって、入団できなかったらどうしよう....!」

不安そうに眉をひそめながら、調査兵団についてそう元気に話す少女は、同期の中でも少し変わり者だ。スーザン・ブラウン、両親が元調査兵で、今は二人とも壁外に眠っていると言う。孤児として開拓地から兵士として志願し、両親の死した場所へ訪れたいと願う義理堅い人間だ。エミリーはそんな真っ直ぐな彼女のことが好きだった。

「スーザン....万年人手不足の調査兵団に、倍率なんてあったものじゃないんだから。それにそのハンサムな上官とやらも、どうせ尾ひれのついた噂だよ」
「冗談だってば!!もうっ、エミリーには夢がないなぁ...ふふっ」

穏やかに笑いながら、エミリーの現実めいた言葉をのらりくらりと交わすスーザン。先を跳ねて歩く彼女とこうして平和な時間を過ごせるのもあと少しかと、エミリーは残念に思う。


「ねぇ、本当に調査兵団に行くの...?命の危険があるのに」
「....当たり前じゃない。だって、お父さんとお母さんがそこに居るんだよ。それに...」
「....?」

スーザンは一瞬、両親のことを思い浮かべながら、答えを探す。彼女が調査兵を志す理由は、他にもあった。

「壁がない空を見てみたいんだ....!!」
「....! ...いいね、それ」
「でしょ...!」

エミリーはスーザンに憧れていた。屈託のない笑顔を浮かべながら、凛として夢を語る少女のことが大好きだったのだ。


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