第26章 城崎温泉そぞろ歩き
彼のお目当てと言うのは
城崎麦わら細工…ではなくて。
ふるや物産点の入口と入口の間の
ひときわ目を惹くブルーの看板が
眩しい、城崎てんぷらだ。
そのテイクアウトスタンドでは
大正十年創業の地元の練り物屋の
『二方蒲鉾』の製品を
気軽にテイクアウトできる。
串に刺さっているので、温泉街の
食べ歩きにもピッタリだ。
数種類ある練り物天の中でも
一番人気なのは、
『かにねぎ串天』(400円)で
私は一番人気のかにねぎ串天を、
彼はげそ串天をチョイスして
一緒にシェアして食べたのだけど。
まだほわっと天ぷらが
温かくて美味しかった。
ずっと…食べてばっかりだな…。
温泉卵もジェラートも
この練り物天も美味しいんだけど。
勿論地ビールも…美味しかった…。
『夕食の前に…軽く、
腹ごなししないとですね?
お腹が空いてる方が、
カニ美味しいですもんね?』
その意味深な腹ごなしが…
残りの外湯めぐりが
また後で…になった理由かもだけど。
『じゃあ、巴さんの
気になってるお店…も
見に行きましょうか?』
「あそこ…なんだけど」
今いる現在地から
次の目的地が見えていて。
和菓子と、麦わら細工を
取り扱っているお店のみなとやだ。
「さっき通った時に
気になってたんだけどね、
ほら、港斗君と同じ名前だし…」
みなとやで有名なのは
季節限定の特製いちご大福で、
11月から5月までの限定販売。
「たじまびじん」は
2012年に開催された
TAJIMAスイーツドラフト会議で
選考された市民のアイデアを基にして。
みなとやが商品化を担当した
市民の夢が本物のお菓子になった物。
可愛らしい薄いピンクの
着物を着たみたいな
可愛らしいお饅頭だ。
いちご大福は日持ちしないけど、
たじまびじんは10日間
日持ちすると言うので、
自分の実家へのお土産に
たじまびじんを購入して。
お夕飯の後に食べましょうと
彼が1個300円の
特製いちご大福を買ってくれた。
「港斗君のお家には
何か買っていく?」
『じゃあ、僕は
こっちの湯のしずくにします』
真っすぐ歩けば…すぐに
戻って来れるのに
気になるお店を覗いたりして
ついでに買い物したりしつつ。