第20章 2人の年越し
洗った方が…って言う前に
もう、注いじゃってたので…。
「あっ」
っと声を上げた時には、
もう既に時は遅くて。
『どうかしましたか?巴さん』
「ううん、何でもない」
『はい、どうぞ』
彼がこちらに差し出して来た
シャンパングラスを受け取って。
『巴さん…新年に乾杯ですね』
「うん、乾杯」
チン…とシャンパングラスを合わせて。
彼と乾杯をすると。
自分の鼻をグラスの中の大吟醸に向ける。
ワインを思わせるような
フルーティーで華やかな香りが
グラスの中からするのは…
さっきまでこのグラスでシャンパンを
飲んでいたらからって訳でもなさそうだ。
一口…口に含むと…、キリッとした
辛口で…スッキリとした綺麗な味をしてる。
「美味しい…」
『どうぞ、巴さん…。
さっきの成城石井の、
ナポリタンチョコレートありますよ』
「バレンタインとか…
日本酒のウイスキーボンボン
えっと、日本酒ボンボン?も
色んな銘柄のがあるもんね…
チョコレートと日本酒も
こんな風に華やかな香りの大吟醸なら
ワインと同じ様な感覚でペアリングできそう…」
華やかなワインの様な香りが
特徴の綺麗な味の大吟醸には
彼が用意してくれた
成城石井のナポリタンチョコレートは
正に、深夜の背徳的なお味で。
『美味しいですね…やっぱり
大吟醸…って感じがして…。
飲みやすい辛口ですし…、
全部飲めちゃいそうですね…』
「チョコレートと…合うね…」
『これ…飲んだら…
姫初め…しますよね?
だってまだ0時過ぎですよ、
寝るにはまだ早いですって…』
明日はそんなに…朝早く
起きないとダメって事は無くて。
ここから…私の実家は
車に乗らなくても歩いて行ける距離だから。
彼も…朝はゆっくりできると
昨日から言っていたから…。
ゆっくりできるのゆっくりには…当然。
『巴さんがくれたゴム、
まだ2つ…残ってますしね…?』
そう言いながら彼が
チョコレートの包みを開くと
自分の口の中にそれを入れて。
口の中で日本酒と…チョコを
混ぜる様に咀嚼して
口を動かして味わって居て。
『巴さん…』