第1章 『私』と『彼』との馴れ初めの話
『私』…、
友坂 巴 には…
8年間交際していた…、
3歳年上の39歳の彼氏が居た。
もう…、惰性の様にして、
彼と8年付き合って居て。
お互いの両親とも何度も会っているから。
自分の親も…彼の親も…、
私と彼は結婚する物だと思って居たし。
私も…もう、36にもなって居たし。
彼とは8年間も付き合って居たのだから。
結婚するものだとばかり…思って居た…。
そう…、突然…その3歳年上の彼から
別れ話を…切り出されるまでは…。
「え?雄介…さん…、今…何て…
別れるって…言いませんでしたか?」
『お前…、耳悪いの?俺はお前とは…
もう…別れるって言ったんだよ…。
だから…、荷物…部屋に残ってるの…
全部…俺が…帰るまでに
片付けて纏めて…おいてよ』
「えっ、ちょっと…、
待ってッ…、雄介さんッ…」
お前とは、話す事なんてないと
そう言い捨てて雄介さんは
そのまま半同棲していた
部屋を出て行ってしまって。
バタンっと…大きな音を立てて、
玄関のドアが閉まる。
ビクッっと巴が肩をびくつかせた。
8年も付き合って居たのに、
突然別れると言われて。
ちゃんとした…
別れる理由らしい理由も…、
説明らしい説明もして貰えないままで。
自分が戻るまでに、私の物を
部屋から纏めて出て行けと言われて…。
雄介の部屋の中を…、巴は見渡した。
部屋の…テレビ台の上に置かれている
2つ並んだガラスのコップは、
一緒に沖縄に雄介さんと旅行した時に
ガラス工房の体験で作った物だった。