第78章 布引ハーブ園
『あの…、7月に
…須磨シーワールドに
行く約束…して置いて…
あれ…なんですけど。
その…小林サンが良ければ…一緒に…』
『布引ハーブ園も…、確か
紫陽花が綺麗だって…聞いた事あるから。
蛯名さんが…良かったら
…昼間にどうです?』
自分から…誘うつもりの言葉を
こっちが先回りしたからなのか。
蛯名さんは元から大きな目を
更に大きくぱちくりとさせていて。
『は、はい…、平日にでも……ッ』
『綺麗ですね…夜景…、
生田さんには…後でお礼言わないと…』
自分ではわざわざこの時間に
夜景だけ観にここに来ようとかって
そんな発想にはならないだろうなって。
ハーバーランドの方からでも
神戸の海側の夜景は楽しめるんだから。
生田さんは…、
ここが良いって思ったから
あっちの夜景じゃなくて
こっちまで僕達を連れて来た訳で。
ロープウエイの10分では…
話したいことが話せないままでいて。
生田さんに…イメチェンしたいって
そう相談したのも、こう…自分で
自分を…変えたかったと言うか
このままの自分じゃダメだって思ったからで。
大分…雰囲気は…変わりはしたけど、
肝心の…中身が一緒じゃ意味がない。
『あの…蛯名さん…』
『は、ハイッ!な、なんでしょうか?』
ロープウエイは…空間が狭いので
彼女の通り過ぎる声で
耳が痛くなってしまって…。
『すっ、すいませんっ、小林サン。
耳、痛かったですよね?すいませんっ』
そんなやり取りをしてる内に
告白処ではなくなってしまって。
山頂に到着してしまっていた。
ふたりと合流しようとしたが、
LINEで別行動と…の指令が来たので。
夜景が見える場所に彼女と移動した。
そのまましばらく…夜景を見ながら
蛯名さんの横顔を眺めていた。
『あの…小林サン……
その…、やっぱり
今日の…髪型とか…色とかって…
ずっと…明日からも
…そのまま…ですか…ね?』
『に、似合ってない…です…よね?…
陰キャが…無理しても…こう
自分の…身の丈に…合ってない…感じッ』
『違うんですッ…
…嫌…なんで…す…ッ。
こ、小林サンが…私の事…その…
女性として…異性として…見れないとか
考えられないとか…は…良いんですッ。
でも……
あの時みたいなの…は…嫌…だっ…』