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こちら、MOB飼育係ver.ハロウィン[dzl]

第4章 ドズルバンパイア目線


 それに、他のみんなにもここから脱出するように言わなくちゃ。僕は飼育カゴへ急いだ。
「待って待って!」
 ハナはやっぱり追いかけてきて。僕は全速力で走ったが、吸血量も足りなくてそんなにスピードも出なかった。
「きゃあ?!」
 その時、ハナが大きく転んだ。ハナはまだ僕たちの習性に慣れていなくて、ぼんさんの包帯に足を引っ掛けたみたいだ。
 だが、これはチャンスだった。今の内にみんなと一緒に逃げないと……と思った矢先、目の前にぽたりと赤いものが飛んできて僕は驚いた。
 バンパイアの僕にはすぐ分かった。血液だ、と。
 ハナは転んだはずみでどこか怪我をしたのではないだろうか。そう思うといても経ってもいられず、僕はハナの元に戻った。ハナは呻きながらなんとかその場で体を起こし、床が血液で汚れていることに気が付いた。
「あ、汚れちゃったな……」
 そんなことより手当てでしょ! と僕がハナの膝に駆け寄ると、もれなくその大きな手に捕まり、あ、今僕は追われていたんだと思い出した。もうだめだ。僕はここで死ぬんだと悟った。
 ハナの大きな目が近付いてきた。
「人間の血は飲める? 今度はバンパイアのご飯買ってくるから、今はこれで許してね」
 なんの話をしているんだ……?
 僕がよく分からずにその大きな目を見つめ返していると、ハナがもう片方の手の指先をそっと出してきた。
 その指先には切り傷が出来ていて、そこから血液が滲み出ていたのだ。そこで僕は全てを理解した。
 ハナはさっき台所で、自らの指先を刃物で傷つけたのだ、と。
 転んだだけで出来た傷ではないと分かっていたから、僕はすぐに分かった。
 でも、こうやってわざわざ差し出されるのもなんだかやりづらくてその場で固まっていると、ハナは僕をカゴに戻して、今度は自分の血液をMOB用ご飯入れに注いだ。どうやら飲むしかないみたいだ。
「ありがとう、ハナ」
 こちらの言葉は伝わらないみたいだが、ハナはにこりと笑ってくれた気がした。僕が大事に血液を飲むと、お喋りなぼんさんが後ろで呟いた。
「いいなぁ、可愛い女の子の血が飲めるなんて」
「ぼんさんも飲みます?」
「やめてよ……俺はバンパイアじゃないんだから」
 すると他の三人も一斉に笑って、僕も笑った。
 僕のために自分の体をも傷つけることを厭わないハナのことが、少し信頼出来る気がした。
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