第3章 「私」目線のお話
売れ残りなんてレッテルを貼られるなんて。手乗りMOBだって私たちと同じ生き物なのに、どうしてそんなことをと飼育カゴを覗き込むと、見たこともないMOBたちが私を見上げてきて驚いた。いや、正確には、スノーゴーレムやオオカミは見たことがあった。だが、残りの三人は明らかに見たことのないMOBであった。セットで売ってると言いに来た店主から話を聞いてみると、ハロウィンにちなんだ手乗りMOBだということで。
そういえばどこかでは、MOBとMOBを掛け合わせて新たなMOBを生み出すという研究をするところもあるのだと聞いたことはあった。だが、まさかこんな形で出会うことになるなんて。私が五人の手乗りMOBをじっと見つめてそう考えていると、もっと安くするから飼わないか、と勧めて来た。
MOBを飼うつもりはなかったのだが、聞くところによると手乗りMOBはそれぞれ必要なことをしていれば寿命で亡くなることはないんだそうだ。といっても、その魔女雪だるまが魔法で復活させてくれるぞ、なんて言い出すものだから、わざと死なせるなんてとんでもない、と私は手を前に振った。
それからもう一度手乗りMOBたちを観察していると、店主がやたらこれもやる、あれもやるからと飼うことを勧めてきた。そこで私は察したのだが、恐らくこの店主はこのMOBたちをさっさと売りたいのだろうと考えた。
確かに、この特殊な手乗りMOBたちには変わった世話をしなければいけなかったのだが、ほとんど自立はしているとのことだ。きっとこの店主は、その面倒くささ故に五人のMOBを手放したかったのだろうと思う。こんな店主に、いつまでも彼らの面倒をさせている方が、五人にとっては酷だと思ったのだ。
「飼います」
私がそう言うと、カゴの中のMOBたちが少しだけざわついたような気がした。もしかしたらこちらの言葉が分かるかもしれない。私はMOBたちに向かって笑ってみせた。
「私はハナ。よろしくね」
するとちらほらと、五人が何かしらのアクションを取って返事をしてくれたように見えた。