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こちら、MOB飼育係ver.ハロウィン[dzl]

第6章 フランケンシュタインおんりー目線


「何がですか?」
 手乗りバンパイア用の日傘の下で食事をしていたドズルさんが真っ先に聞いた。俺は黙って雷玉をかじってぼんさんの次の言葉を待った。
「ハナちゃん、俺たちのこと名前で呼んでないんだよ。俺なんかミイラさんって呼ばれててさ」
 ぼんさん、飼い主のことを「ちゃん」付けで呼んでるんだ、なんて話題とは違うことを考えていると、そこにいたおらふくんがケラケラと笑った。
「そんなこと言ってもぼんさん、僕たちの言葉はハナさんには伝わらへんやろ?」
 とおらふくんが言うと、けどさぁ、とぼんさんは俺に目を向けてきた。
「おんりーちゃんはどう思う? ハナちゃんに名前呼ばれたいよね?」
「うーん、あまり気にしなかったけど……」
 そもそもあの店主だって、俺たちのことを名前で呼ばなかった。というか俺たちの名前は、互いが互いを呼び合うために自分で名付けたただの単語にしか過ぎず、ぼんさんがそこまで焦っている理由がよく分からなかった。
「ワンワンッ!」
 そんな時、MENは足元でそう吠えた。
 確かにMENは手先が器用で毎回飼育カゴの脱走手段を見つけていたが、いくらなんでも翻訳機を作るのは不可能な気がした。それより何より、昼間はただの小さなオオカミなのだし。
「でも、今すぐ飼い主さんに伝えるのは難しそうですよ、ぼんさん」
 名前を呼んでもらうのは諦めましょう、とドズルさんが言い、ぼんさんは少し寂しそうにそうか……と俯いたのを見て、急に俺の脳裏に赤い花びらが過ぎった。
 なぜ俺に赤い花が似合うと思ったのか、直接聞いてみたい、と。
「……確かに、翻訳機は欲しいかも」
 俺が呟くと、落ち込んだ様子だったぼんさんがすぐに飛びついてきて、そうでしょ? と聞いてきた。俺は頷いた。
「じゃあMENに翻訳機作るように頼もう!」
 そして、清々しいくらい包み隠さないぼんさんは、MENに思い切り聞こえる声量で公に言い切る。俺が反応に困っているとMENが何を思ったのかまた吠えた。
「ワン! ワワワン!」
 なんて言ってるか分からないがどっと笑いが湧き、俺も一緒になって笑った。ぼんさんはタダでやってもらおうと懇願しているが、きっとMENは何か文句言っているに違いない。
 けど、翻訳機があったら。
 そんな期待がほんのりあったことは、今はまだ内緒だ。
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