第4章 𝕂𝕒𝕝𝕒𝕟𝕔𝕙𝕠𝕖 𝕦𝕟𝕚𝕗𝕝𝕠𝕣𝕒
私はそれだけは、と言わんばかりに顔を上げてしまい、ようやく反応を見せた私に彼女達はニヤァと口角の端を引き上げる
轟くんの口から"私に対して迷惑してる"なんて言われたら今度こそ身が持たない
この場で泣き崩れてしまいそうな勢いだよ
やだ…聞きたくない
正面に立っている轟くんは小さく息をついたあと私の肩に腕を回して引き寄せる。私の体に轟くんが被さり、少し早い心拍音が耳に伝わってくる。余りにも突然のことにUSJでの記憶が蘇る
轟くんは私の耳横まで、顔を持ってきて低く唸るようトーンで彼女達に言う
「アンタら迷惑だから失せてくれ」
誰も予想しなかった場面に轟くんを除く全員が唖然とする。そんな私達にお構いなしに、彼は鋭く言葉を彼女達に投げ掛けていく
「お呼びじゃないのはアンタ達だろ
オレは 秋月だけいればそれでいい」
轟くんの威圧感のある声に女の子達の顔からは血の気が引いていってる。彼の胸の中で慌てて声を張り上げる
『轟くん!私は大丈夫だから…
……轟くんにはそんな事言わせたくない』
うまく言葉に出来なくて濁した言い方になっちゃったけど…轟くんには笑っていてほしい
怒りや苦しみより、喜びや楽しさに触れていてほしい
「…そういうところだって言ってんだろ」
『えっ今なんて…』
轟くんは私の目横に片手を添え、前髪を器用に親指で端へとどかす。覆うものがなくなったおでこはやや涼しく感じたがすぐに熱を取り戻すことになる
轟くんはむき出しの私の額に何の躊躇もなく唇を落とす。突然のことに驚き、思わず体を硬直させてしまう
私達を取り囲んでいた女の子達は青ざめさせていた顔から一変、口をこれでもかと言うほどへの字にさせ顔を真っ赤にしている
一人の子が「もういこ!」と言うのを合図に、驚くほどあっさり引き下がっていた