第9章 𝕎𝕒𝕥𝕖𝕣 ℍ𝕪𝕒𝕔𝕚𝕟𝕥𝕙
息ができないほど心臓が高鳴って、もどかしい気持ちが胸の中いっぱいに占めて恥ずかしい…
啓悟くんの手を振り払って布団を頭まで上げて潜り込む。
『…まだ眠いからボーッとしてるだけ
け、啓…啓悟くんは…?何してるのっ』
うわぁ、なんかすごくどもった上に最後声上ずった…!唇を噛みしめて一人打ちのめされていると、しばらくしてから啓悟くんが声のトーンを少し下げて聞いてくる。
「…やっぱり昨日来れなくて怒ってる?」
!そういえば…体育祭終わったら来るって言ってくれてたんだった…それどころじゃなくて完全に頭から抜けてた
本当は怒ってなんてなかったけど今彼に言い訳する理由が他に見当たらない
『……怒ってる、よ』
「そっか
じゃあ今日はそこから出てきてくれない?」
布団越しからじゃ啓悟くんがどんな顔をしてるのか全然わからなくて、なんて返事したらいいのか迷った上にただ頷くだけしかできない。
「じゃあいいや、そのままで」
グンッと勢いよく体が横に引っ張られ軽い衝撃を受ける。突然の揺れに何がどうなってるのか分からなくてあたふたしてると、布団越しに体をギュッと締め付けられるのを感じる。体に何か…巻き付いてる。
「…なんか顔見られたくないし…やっぱ丁度いいかも」
啓悟くんの声が限りなく近い。すぐ上にそこにいる。押し付けられたそこからドッドっと心拍音のようなものが聞こえてくる。激しくて速いその音で自分が彼の腕の中にいることを思い知らされる。
……布団あってよかった
だって私の胸も同じ速さで
同じくらい激しく高鳴ってる
こんな顔見せられない
「もう少しこのままでいさせて…」
しばらく穏やかでゆったりとした沈黙が部屋を満たす。彼の胸元にもたれ頰を擦り付ければ、抱き締める腕の力は強くなり息苦しいくらい固く包まれる。
『……苦しいよ』
苦しい、昨日までたった一人だけだった
私の心には一人しかいなかったのに
触れたくて傍にいたくて愛おしくて…
あぁ…こんな気持ち轟くん以外に抱いちゃダメなのに
我慢できない気持ちが溢れそうになり、押し付けていた身体を起こす。
『……あのね…好きなの…わた』
「いいから…ッわかっと…」