第7章 𝔸𝕟𝕖𝕞𝕠𝕟𝕖
《ホークスside》
悲しみの涙は流させない
初めてあったときからそう決めていた
オレがいる間は絶対に…
あの子が常に笑っていられるように
望みは出来るだけ叶えて
五年間ずっと見守ってきた
でもあの子の中にはオレなんかじゃ計り知れない負い目が眠ってて、雄英に行くことで満たそうとしてるのを最近になって知った
……傍にいるだけじゃダメらしくて
雄英に行けば必ずどうなるのかなんとなく予想がついてた
ま、その予想は見事に的中した訳でね
ひかりちゃんは焦凍くんを見つけた
いいや出逢ってしまったと言う方が正しい
…なのにさぁ
「…観に来てくれないの…?」
なんでそんな心細げな声で言ってくんの
なにそれ、今 ひかりちゃんにはオレなんか必要ないでしょ
もう傍にいてくれる人がいるくせに
『…観に来てほしいの?』
言ってしまってから後悔した
何を言わせたいんだよオレは
けど今の ひかりちゃんの中にオレが全くいないなんて思えなかった
相変わらず執着しすぎて自分に引きそう
(別に諦めたわけじゃないけど)
『ううん、やっぱり大丈夫!
啓悟くんが自慢できるように頑張ってくるからっ』
「じゃあ優勝しちゃう感じー?」
『んーそれはムリ』
「なんでよ笑」
オレはそんな出来た大人じゃないっていい加減気付いてくれないだろうか
… ひかりちゃんオレ昨日何か言いかけたでしょ
「観に行けないけど、終わったあと会いに行くよ」
『ほ、ほんと!』
顔に血が集まっていい年して熱くなってんのがわかる
…あぁばり止めて欲しか…
いつからこの可愛さを年相応の反応として見れなくなったんだろ
愛おしくて壊れるのが怖くて、何よりも大事にしていた
『じゃあ待ってるねっ、また』
「うん、中継から応援してる」
通話を切って二回宙返りし、逆さまになった姿勢で視界に広がる群青の空を眺める
何も考えたくなくて雲行を目で追ったりして
『…" 行く前に一つ
あのさ ひかりちゃん…今日…
焦凍くんのこと何回思い浮かべてた? "』