第11章 ジェラシーとキス
現在、剣道部の練習を観ている私は多分誰がどっからどう見ても怪しい人だと思う
ほんとはさ、ギャラリーの上から
『沖田!がんばって』
「ありがとな、桜っ!」
というピンクオーラ全開でいくつもりだったのに!
なんで…なんでわざわざギャラリーの隅っこの方から観なくちゃいけないのよ!
あれもこれもそれも全部石田コノヤローのせいだ!
「桜さん、沖田先輩ってどの人ですか?」
『イケメン』
「いや、わかんないっす…まあいいや!多分見つかりますよね」
とか言ってたけど絶対沖田に何か言うつもりだよあれ!
だから私は敢えて沖田が目につかないようなところに隠れて影ながら彼を応援しているのだ
「きゃああ!土方くん、沖田くん頑張ってー!」
試合でもないのにギャラリーは女子たちで溢れていた。
にしてもモテるなぁあの二人は…。
がんばれ、沖田。
1時間くらいしてようやく休憩が入った
道場から出た土方と沖田に女子たちが一気に集まる
「お疲れ様です!あの良かったらこのタオル使ってください!」
あ!あれ私がやりたかったやつ!!くっ
近づきたいけど近づけない、何とももどかしい状況の中で1人闘っていると石田くんが話しかけてきた
「何やってんすかそんなとこで」
『いや、石田くんと沖田に見つからないように…って石田くん!?何やってんの!』
「いやそれ今俺が聞いたんすけど…」
あぁ…私の作戦が。
『と、とにかく!私に喋りかけないでくれたまえ』
「はいはい…」
ふぅ、と近くのベンチに腰を下ろして水を飲む石田くん
汗…びっしょりだな…一応真面目にやってるんだ。
石田くんの頭にふわっとタオルを被せると彼は驚いて私を見た
『ほ、ほんとは沖田に渡すつもりだったけど頑張ってるみたいだし…使わせてあげるよ』
そっぽを向いて言う私に彼は少し照れたように笑った
その時、
「オイ吉野」
『!沖田』
なんと沖田に見つかってしまったのだ
「あんたが沖田先輩っすか!
確かにイケメンすね」
「あ?」
ちょっと!石田くん!?
「はじめまして。俺、石田俊っていいます。今日は沖田先輩に会いたいなーって思ってたんです」
「…なんでィ」
「俺、桜さんが好きなんです」
「!」
「俺が彼女を貰ってもいいですか?」