第11章 修学旅行の時間
「嘘…」
『もちろん病院送りです。治療してもらったんですが、医者はこの傷は少なくとも十年はしないと消えない…と』
「そんな…そんなの虐待で捕まえられるじゃん!」
『そうですね。自分でかけて、自分で通報した以外の場合はね』
「「「!」」」
『当然状況も隠ぺいされますし、警察の目は行き届かなかった』
「バカみたいじゃん…たかが自分の子供が成績が落ちたくらいで手を出すなんて…!」
『……確かに、父の言動はおかしいです。
けど、私が悪いんです…E組なんてところに落ちた私が…』
「…」
『こうなると思ったから嫌だったんですが…
暗い話してすみません。先上がってますね(ニコッ』
――――
「火傷…遊夢ちゃんの背中に…?」
「はい、私達もあれを見て、急に怖くなってしまって…」
「早稲田さんはきっとまだ隠してる。あの瞬時に出た笑顔も、自然に口から出た自嘲の言葉も、あそこまで追い詰められないと出てこない…」
「そんな…先生に言わないと…また遊夢ちゃんが…」
「それは…みんなも話したんだけど…一個人で国家秘密の先生が、私達の家庭までどうにかなるのかって言ったら…」
神崎さんが伏し目がちに話した
「…けど、倉橋さんから今日の班別行動は普通だったって聞いたから…少し安心して」
「「大丈夫?」っていうのはそういう意味」
「………そっか…」
許せない気持ちとやるせない気持ちが僕の中をぐるぐると渦巻く。もし、あの笑顔をそれが奪ったのだとしたら…
それを取り除いてあげたい。
けど、お前にどうにかできるのかはきっと僕にも同じ質問だ。
「今は、ここを居場所にしてあげるのが一番じゃないかな?」
「うん…そうだね」