第43章 ”もういいかい”の時間(重いR)
渚さんのことを初めて本能的に拒絶した気がする。
だって…あれはまさに自分の父親だったから。
それでも、なんだか罪悪感は拭えなくて…
『はあ…』
もう寝よう。明日になれば時が忘れさせてくれる。
そう自分に言い聞かせながら布団を被り、ぎゅっと目を瞑る。足を畳んでダンゴムシみたいな態勢になる。
ああ、そういえば小さいころ嫌なことがあるとこうやって眠る癖があった。
叱られた時、期待感に耐えられなくなった時、両親が夜中音を立てて喧嘩をしている時、
体を丸めて自己防衛の形になる。
早く眠ってしまえ、明日にはみんな消えてなくなってる、と自分に言い聞かせて。
ねえ、私の”憎しみ”
あなたが私を子供に還らせているのなら、
あの時みたいに夢の中に私を連れて行ってよ
怖い夢でも、その空間は現実から私のことを守ってくれた
なんなら、もう目覚めなくてもいいから…
と、
近くの部屋の奇声で目が覚めてしまった。ああ、またかと一度体を起こす
あいつが家に女を連れてくるなんて珍しいことではない。寧ろ母が生きていた頃にもざらにあった。亡くなった今は後処理は私がする始末に。あの換気されてない息が詰まるような部屋、これ見よがしにベッドに放り投げられている生臭い使用済みのもの達
いつになっても慣れない。慣れるつもりもない
ねえ、あんた今どんな気分?こんなこと娘にやらなせて…
”お母さんが死んだ部屋”で若い女とおっ始めるってどういう気分なの?さぞかし興奮してんでしょうね。
気持ち悪い。
女性の方も一周回って哀れだな。こんな人に大した金なんてないのに腰振って喘いでなきゃならないなんて。何なら全部ぼったくってもいいくらいだ。
…でも、私の中で女性の価値観がどんどん歪んでいくから、できれば私の前に現れないで欲しい。
あいつらのせいで寝れなくなった。もう一度睡眠薬を飲んでくるか…
話し声は耳を澄まさなくても聞こえてた