第5章 卒業まで
いつからだろう。
こんな風に狗巻先輩に想いを寄せて、ふたりで過ごす時間が増えていったのは。
壁に掛かった狗巻先輩の制服を見上げた。
毎日着て学校や任務に出ていたのに、明日の卒業式を過ぎればもう二度と袖を通す意味を持たない黒の制服。
触れればひやりとした独特の布の感触。
校章の渦巻き柄のボタン。
見慣れた狗巻先輩の部屋は既に大半の雑貨は片付けられ、ダンボールが端に積み上げられている。部屋には備え付けの家具と必要な日用品が少し残るのみだった。
ひと足先に寮を出た乙骨先輩。狗巻先輩と真希さんは卒業式を待って、それぞれに高専から近い場所にアパートを借りた。パンダ先輩はパンダ故にやはり色々と問題があってこのまま寮に残る。
4月からは4人、正式に呪術師として働く事になっている。
狗巻先輩がここで過ごす時間も残り僅かだった。