第2章 灰色の朝
○
ハッと目を覚ますと見慣れた天井が目に入った
『夢、か……』
「ゆる」
『……新くん』
「また、あの夢、見てたの………?」
気まずそうに聞いてくるいとこ、辻新之助はクールなのに女子が苦手というギャップ持ち男子だ。
『大丈夫だよ。新くんは心配しすぎ。お兄ちゃんみたいだよね。……でも、いつもありがとう。』
「っ。いつも言ってるけど……絶対に無理はダメだから。」
『分かってる。』
そう言って新くんはリビングへ降りていった。
毎日見るこの夢にうなされて眠れていない時期があった。
でも、新くんのおかげで今は安心して眠れている。
私だけが生き残ってしまった大規模侵攻。
家族を目の前で失った大規模侵攻。
この呪縛が解かれる日は来るのだろうか。
○
「やっと降りてきた。ご飯、冷めるよ。」
新くんが声をかけてきた。
日曜日なのに新くんの家族はもう出掛けたのか。
「ゆる。おいで。」
私の気持ちを察して声をかける。
新くんがこう言う時は、甘えてもいいんだよのサイン。
『……新くん。ぎゅーして。』
そう言うと、子供をあやすように優しく抱き締めてくれる。
この瞬間が一番好きだ。
新くんがここにちゃんといるって分かるから。
「……やっぱり夢、怖い?」
私のことは何でもお見通しだ。
『……ううん。大丈夫。』
だからこそ、心配はあまりかけてられない。
「……」
何も言わずにしばらくの間、新くんは私を抱き締めて、安心させてくれた。