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キラキラ星

第5章 生欲求




— 生欲求 —


彼と行動を共にするようになり、もう半年だ。私はそこそこ了という男を知り得ているつもりだ。だから、分かる。


『このまま、こんな行動を取り続けていると、周りは全部敵だらけになりますよ。貴方は、孤立してしまう。私は…そうは、なって欲しくない』

「そっか。うん、そうだね。君は、優しいね」


分かっている。
私がどんな言葉を掛けたところで、彼の心には、届かないって。


「優しく愚かなお前は、この僕に意見して楯突いた。つまりは、お前も、僕の敵側に回りたいってことだ」


了の瞳に、射抜かれ殺されるかと思った。それくらいの気迫が、私を襲う。同時に、長い腕が瞬時に伸びて来て、壁に押さえ付けられる。壁ドン、なんて生易しいものではない。ギリギリと、壁側に全力で押し付けられているのだ。


『っ、!あ、なたには、1人になって欲しくな』

「そのうざったい言葉しか出てこない口を、今すぐに閉じろ」

『こんな事ばかり、続けていたら、貴方はいつか誰かに刺されて死んでしまう!』


痛みに耐え、力の限り叫んだ。その時だ。
こんな異様な2人に、ふらふらと近付いてくる人影。2人してそちらへ顔を向けるとそこには、ナイフを手にした、狸親父が立っていた。
その鈍色に光る凶器には、さすがの了も目を丸くする。


「わぉ!驚いた!まさかが、未来予知の出来るエスパーだったなんて!」


さすがにこの状況下で、了の冗談に乗っかる気にはなれなかった。

彼の腕の力が緩んだ隙に、長らく押さえ付けられていた壁から脱却。そして、男の動向に全神経を集中させる。
ぶつぶつと何かを呟いてる男に、了の方から言葉を投げ掛ける。


「刃物、人に向けちゃ駄目だってパパとママに教わらなかったのかな?」

「うるさ…もう…終わ…契約を、結べなかった、時点で…」

「んん?何て言ってる?声が小さいなぁ。話を聞いてあげるからほら、何が気に入らなかったのか言ってごらんよ」


まさか、説得を試みるだなんて。了らしからぬ、平和的な打開策だ。さすがの彼も、この若さで死にたくはないのだろうか。

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