第15章 *お泊まり 【夜久衛輔】
“どうなっても知らないから”
私の耳元でそう囁いた彼の顔は
もう、男の顔だった。
ほんの少しだけ、怖いと感じた。
だけどそれ以上に
かっこいいって思った。
こんな顔、私だけに見せてくれればいいのにとも思った。
そんな素敵な彼になら
何をされてもいいかなとさえ思えた。
「いいよ。」
「お、お前!!んなこと他の男に言ったらただじゃ済まねぇからな…!!!」
大丈夫だよ。
言葉のかわりに私は夜久くんを抱きしめた。
それから、二人で夜久くんのベッドに潜った。
シングルだから、思った以上に狭くて、体が密着する。
鼓動が、夜久くんにまで聞こえてしまいそうだ。
ドキドキしているのがばれないようにうずくまる。
「?そんなにうずくまって…寒いのか?だったら、ほら、もっとこっち来いよ」
そう言って私の腕を引っ張る。
私は夜久くんの胸に飛び込んだ。
あれ…?
夜久くんの胸からは、いつもより少しだけ速い鼓動が聞こえる。
なんだ。
ドキドキしていたのは私だけじゃないんだ…!
「お前、足冷えてんぞ。」
そう言って足を絡めてくる。
やばい、思った以上に恥ずかしい…
ただでさえ密着してるのに…!!
「かわいい反応しやがって。どーせ今、顔真っ赤だろ?」
夜久くんには、すべて見透かされているみたいだ。
「明日朝練あるし今日はもう寝ようぜ。」
そう言って私の頭を撫でる。
私は気がついたら眠っていた。
*
朝になり、私は時計に目をやる。
5:00分
朝食作るから今起きないとな。ついでに弁当までつくっちゃおう。
ベッドから体を起こそうとするが、何故か起きることができない。
原因は…
夜久くんだ。
そう。夜久くんが抱きついたまま離れないのだ。
…寝顔かわいいな
おっといけない、見惚れてる場合じゃなかった。
とにかく、この腕をどけてもらわないと!!
「夜久くん朝だよ。起きないと…腕離してよー」
「んっ…」
小さく唸っただけで、何も反応なし。
「夜久くんっ!」
思いっきり叫んでみた。
さすがにこれで起きるだろう
「もうちょい寝ようぜ」
無理矢理ベッドに戻される
この後私達が朝練に遅刻したことは言うまでもない
*お泊り
それは君と1日だけの夫婦生活