第11章 第十話 奇妙な館
それって、と不二も彩音と視線を合わせる。
その2人の様子に、神田も彩音の様子がおかしくなった時の事を思い出した。
「原因は分かっているのかい?」
「今まで原因は知りませんでした。…ですがあのバルセロナでの戦いの時」
忘れもしないあの瞬間。
―――――デイシャのイノセンスが目の前で壊された時。
「…。デイシャのイノセンスが壊された瞬間でした。私の体に異変が起こったのは」
「…って事は前の時は」
ユキサが神田の言葉に頷く。
「あの時神田が通信で聞いていたのは、イエーガー元帥が襲われたという知らせでした。それからすぐに体に異変が起こった。…イエーガー元帥の持ってたイノセンスが壊されたからだと思います」
「ふむ。なるほど」
そしてその異変を、あのノアに見られてしまったのだ。
通常じゃありえないその現象に、ノアに目をつけられたのだろう。
話を聞いていた彩音が、おずおずと口を開いた。
「ユキサ、その…実は私も、同じような事があって…」
「え?」
ほぼ同じようなタイミングで彩音も胸の苦しみを感じていた。
ユキサのようにイノセンスが光る事はないが、タイミング的にも同じ症状だろう。
「ふむ。ユキサちゃんと彩音ちゃん。キミたちはこれからくれぐれも無理はしないように」
「元帥、ハートの可能性が…?」
マリの言葉にティエドールがうーんと首を傾げている。
だが今まで見たことのない現象だ、念には念を。
「特にユキサちゃんは既に敵にバレている。…単独行動はしないように」
今日のようにね、と言われてユキサは素直に頷くしかなかった。
「神田、極力ユキサちゃんについているように」
「俺が?」
「強さもコンビネーションも問題なさそうだからねぇ」
ちらりとユキサを見てから、わかりましたと神田が言う。
「彩音ちゃんの方はまだ敵にはバレていないようだけど。私たちからは離れないようにね」
「は、はい」
頷いた彩音を見て、行こうかとティエドールが歩き出した。