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月を抱く

第1章 未知の味


司祭がポーションと針で治療をしていく。

「なぜここにピュアヒューマンが居るのかな?」

「この間からだよなー?」
「うん、いつの間にか森に居たんだ」

うんうん、と子供たちの話を聞いていく。
"秘密基地"と呼ばれるそこは放置されたボロ屋だった。
ピュアヒューマンは治療が済むとすぐ司祭から距離をとって壁際に踞った。

「君、名前を教えてくれないかな」
「あ……」

「……大丈夫だぜ!この人、
人間足ではないけど暴力ふるったりしないから!」

ピュアヒューマンはチラチラと司祭に目をやる。
司祭はデミックスでナーガと呼ばれる姿をしている。
その怯えた様子から魔物に襲われた経験があるのだろうと察する事ができた。

「……ニルダ、です」

「ニルダ、残念だけど……君にはすぐ村から離れてもらいたい」

「……!」

子供達がザワつくも、司祭の様子に口をつぐむ。
吸血鬼はどんな種族にも宿る。だからこそ、
種族差に寛容であり旅人も受け入れてきた。
子供達からすれば村から出ていけ、というのは
それだけ特殊で厳しい対応だと分かっただろう。

「悪く思わないでくれ、
先程の騒動で既に分かったと思うが君を守る為でもある。
無惨な死に方をする人間を村で出したくない。
この村は皆が皆、同じ食性や信条は持たない。
だからこそ、君が無事に済むとは思えないんだ」

ちら、と目線を投げられたラキはビクリ、と
肩を震わせて視線をそらす。

「ラキ、君もだよ。
この村の秩序を乱すなら置いてはおけない。分かるね?」

「し、司祭様!考え直してください!ラキは、」

「レグナ、これも神の導きなのです。
僕が長い時間を経てこの村に来たように、
ラキには行くべき場所がある筈です。
時が来たのですよ」

ラキは黙って爪先を見つめていた。
レグナは口をハクハクと動かしどうにか理由をつけようと
必死に思考を巡らせていたが暫くして拳を床につくと項垂れた。

「ラキ……」

「さて、子供たちは帰りなさい。
まだ僕はラキ達と話があるからね。
そうだろう、レグナ」
「…………。」


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