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月を抱く

第3章 沼地の井戸


「なあ、どうする?人間足だよな」
「何でも拾ってくるなよ」
「可哀想だろ!生きてるんだぞ」
「自分が死んでるからって珍しがるな」

スケルトンと緑のリザードマンがニルダを眺める。
手足を縛られ口を覆われたニルダは涙目で震えるばかりだ。

「可哀想に震えてる!きっと寒いんじゃないか」
「いやお前が怖いんだろ、喋る死体だぞ」
「お前だって魔物じゃん!」
「いーや!知性あるデミックスですけど?」

二人がやいやいやっていると騒ぎを聞きつけたスライムが
ほよほよと震えながらニルダにすり寄る。

「寒くも怖くもないのに震えてる魔物が来たな」
「俺たちの会話の全てが否定されたな」

スライムは分かっているのかいないのか震え続けている。
ニルダ達が居るのは森を抜けた先の沼地の真ん中にある井戸、
そこを抜けたすぐ地下の空間だ。

「ぷはっ……、……?助けてくれたの?」
「あっコラ」
「アイツ絶対俺たちの事分かってるよな」

スライムが震えて体をこすりつけ、器用に縄の結びを解いたらしい。
ニルダはすぐ捕らえられもせず魔物に助けられ拍子抜けして座り込む。
スライムはほよほよと移動し膝に収まった。

「……居心地良いのかな」
「まあ俺たちより柔らかい肉してそうだしな」

「た、食べないでください……」

「エ?ああ、俺たちは肉なんか食べないよ安心しな」

リザードマンがスケルトンと自分を指差して言う。
で?どうするんだあの人間、と再び話が堂々巡りする。
ニルダはそっと井戸の入り口を見上げた。
梯子も何もない石作りで自分では登れそうにない。

「あの……私、さっき外でバケモノに襲われて……」
「あっ、そうだそうだ。また出たんだよアレ」
「ええ……勘弁してほしいな」

リザードマンが心底嫌そうにし、スライムは震えのスピードを上げた。
膝がとてもボヨボヨしているニルダは戸惑った顔をする。

「まだ外に……人が居るんです」
「えっ?あー……残念だけど俺たちもアレは……
何せあの体だろ?止めようが無いんだよな」

「でも人間だったんだよ!俺はまた行くぞ!」
「ええ……拾ってくるなって」

リザードマンが迷惑そうな顔をするのも無視し、
スケルトンは異様な速さで石畳を登ると走り去った。 あまりの速さに気持ち悪い程だった。
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