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月を抱く

第2章 巣立ち


「ラキ、は……
ラキは異界児なんだ、何だか分かるかい……?」
「ううん……」

レグナが涙まじりに辿々しい説明をする中、
司祭は教会から持ってきた物をあばら屋の机に並べ始めた。

「ラキは父さんの子じゃないんだ……。
狭間からやってきた赤ん坊で、だから、司祭様が導く教えの通りなら
異界児は神様から目的があって使わされるんだ。
お前はこの奇妙な服にくるまれて朱塗りの頭蓋骨と一緒になって現れたんだよ」

司祭が並べた物から赤い着物を手に取りラキに見せる。
と、ラキはぼろぼろと涙を溢して人の姿へと戻った。
レグナが驚いていると司祭がさらに持ち物を差し出す。
それをかき抱くとラキは縮こまって嗚咽をあげた。

「やはり、何か思う所があるのかな」
「全部、全部、大事なんです……
分からないけど大事な筈なんです……」

「……やっぱりもう行ってしまうんだね」

レグナが縮こまるその背を撫でる。
ラキはハッと起き上がると父を抱き締めた。
そしてふと戸惑った顔をし、

「パパは……、私の事きらいにならないでね」

「嫌いになんか……!良いんだ!怖いなら良いんだよ!
旅になんか出なくたって、そうだ、ここの小屋を直せば村には入れなくても」

「レグナ。……ラキ、
"パパは"という事はもしかして"記憶"があるのかい?」

ラキは頷いた。毎晩みていた悪夢の通りの事をした時、
それが予知夢ではなく過去だったと確信した。
過去、ここではない何処かでラキは
やはりこの異形の姿になり追い出されたのだ。

「……その記憶が導きとなる、と僕は聞かされています。
ラキの大事な物も、その苦しい記憶にも意味があるのです」

「導き……」

ラキはハッとしたようにニルダをみた。
ニルダはびく、とした後に自分?と指をさす。
ラキは頷いて司祭に向き直る。

「私はニルダを連れて行かなきゃならない場所があるのかも。
だからきっとこの記憶で、ニルダが私の元に来たんだ」

「……僕に止める権利はありません。
ニルダ、君が決めてください。危ない旅になるかもしれません。
敵だけではなくラキ自身も信じられなくてもそれでも一緒に行くのですか?」
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