第7章 寂しさ
「あのさ、キスやり直しさせて?」
ベッドへと二人で寝転び互いの顔を見合わせていた時だった。私の頬にかかっていた髪を耳元へとゆっくり戻してくれる。
「…やり直し?」
「うん、さっきの上書きがしたいんだ。優しくする、だからヒナにもっと触れても良いかな」
頬に触れていた手がそこからなめらかに滑り落ちると、私の唇に悟の親指がかすかにスッと当たる。きっとさっきの事を気にしているのだろう。私に触れる手が少しばかり遠慮気味なのがわかる。
「…いい、よ。優しく…してね」
目の前には優しく細められた碧色の瞳。それはどこか甘く熱を持ち、私を真っ直ぐに捉えて離さない。
「ありがと、絶対に優しくする」
キスをするのは何度目だろうか。この家に一緒に住むようになってから、毎日とまではいかないが何度か唇を重ねた。悟の言う恋人扱いの一つだと思う。
それは、悟が家に帰ってきてすぐだったり。ベッドで二人何気ない話をしている時だったり、任務で家を出る少し前だったり。
そのどれもは優しく触れるだけのキスで、悟は心底優しく私を見つめてくれていた。だけどきっと、今からするのはそんな触れるだけのキスではない。先ほどの激しく怒り任せなキスを上書きしたいと言ったんだ。それならばきっと…そう考えて自分の心臓がドクドクと鳴り出したのを合図に、悟の綺麗な顔がゆっくりとこちらに近付いてきた。