
第2章 二人暮らし

朝食を食べ終えて倉庫兼自室に戻りパジャマと褞袍を寝台の上に脱ぎ捨てる。カップ付きの肌着とショートパンツを身につけ(倉庫をあさってたら出てきた。たぶん遊びに来る「誰か」用だと思う)白澤から貰ったお古のYシャツの上に、これまたお古の白衣を着る。少々大きい服の袖を捲り首からタオルをぶら下げて此処に来た時に履いていた草履から白の長靴にはきかえる。
この何とも色気のない作業着が、最近の私の服装だ。
ポケットにヘチマ水を入れた瓶を入れてリビングを抜けて外へと向かう。彼はまだまだ辛そうにもそもそと朝食をとっている、この調子だと後30分と言った所と見た。
観音開きの店の扉を開け空気を入れ替える、と同時に軒先にある従業員用の東屋へと向かい扉を開く
「おはようございます、皆さん。今日も一日お願いします。」
そう言えば可愛らしい兎さん達がペコリと一礼した後に外へと飛び出して静かに雑草を食べ始めた。ヤバい、もふりたい。
全員が外に出た事を確認してから家の裏の温泉へと向かう。軒先に作られた洗面所兼洗濯物洗い場にしゃがみ込み顔を洗う。水面で寝癖を確認しながら跳ねてる所を確認して濡らして抑える。
整ったと思った所で水鏡に向かってニコッと微笑んでみる。
「・・・据え膳に上がらないくらい、可愛くないのかな。アタシ?」
此処に住み始めた最初の三日間、それなりのサインを出したつもりだ。
彼がアタシに興味を持つように自己紹介をはさみつつお話したり、お仕事に興味を持った振りをして手伝ったりもした。相手を一人にして考える時間も与えたし、お酒にだって付き合った(ま、アタシは笊だから落とせなかったけど)
今まで出会った男たちなら此処まで引き出しを開けばホイホイついてきた、のに彼…白澤は全く私になびかない。
「少し世話焼きすぎたかな?いやいや、あの倉庫見れば女好きだって言ってるようなもんだし…」
今後自室となるだろう倉庫を掃除した時に見つかったサイズも趣味もバラバラな女性物の服とか、お宝本とか、果ては何時作ったのか判らない肥後芋茎とかも出てきた。
断言しよう、彼は女好きだ。しかもかなりストライクゾーンが広いとみた!
ここまで来ると逆に興味がわいてくる、彼がアタシの事をどう思ってるのか。そんな事を考えていれば
「準備できた?僕もソコ使いたいんだけど。」
と。ああ、もう考えるのはやめだ。さぁ、今日の仕事も頑張ろう!
