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【鬼灯の冷徹】君という花【R15】

第10章 黄色いバラを一輪


しとしとと雨が降っている

彼―白澤―は今日もいない

多分どっかの誰かとイイ事してるんだろう。

いつもと変わらない夜なのに

何故か一人でいるのがイヤだ

…だけど友達に会いに行きたい訳じゃない。

自室を出る。

薄暗く漢方の匂いにあふれたお店を抜けて
入り口付近にある唐傘を掴む。

扉を開ければ人がる曇天

うさぎ従業員さんはもう眠りに就いたみたいだ。

傘を広げて花畑へ向かう

足にまとわりつく雨が冷たい。

何時も晴天で、だけど潤いある桃源郷では
雨が降ることはめったにないよ、って
白澤が言っていたのを思い出した。

見慣れた笑顔が浮かんできて

良く分かんない、気持ちになった。

畑の端に植えた黄色い花弁が目に入る.

無意識に手を伸ばす

みずみずしい花弁を摘んで、つぼみを摘んで

気が付いたら指先が切れてた。

肩に傘を引っ掛け片手に花を、片手を口に
鉄の味が不思議と美味しい。


「花茶でも飲もう」


どうせ今夜は帰ってこないんだから
ゆっくりお茶を飲んでから
彼のベッドで寝よう。

ラジオも持ち込んで眠りにつくまで聞き流そう

こんなに変な気持ちになるのは

この雨のせいだ。

きっと。
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