第53章 花言葉
それからしばらく花壇の周りを歩いていると、
雨雲が目立ち始める。
エルヴィンは今にも
泣きだしそうな空を見上げると、
「降り出しそうだな。
雨宿りできそうな場所を探すか。」
そう言ってエマの手を引き、
少し早足で歩き出した。
案の定、雨は降り出し、遠くでは雷鳴が轟く。
「……なんかこの感じ、懐かしいですね。」
「そうだな。
君と初めてデートをした時も
急に雨が降り出して、初めて一晩を共にした。」
エルヴィンはエマの顔を覗き込む。
「その言い方は、どうかと思いますが……」
“一晩を共にした”
という言葉を気に掛けるエマに
「あの時は君と初めてキスをした
記念すべき日だったからな。」
と、エルヴィンはそう言って少し笑うが
「……だがあの時は、
私が相当君に甘えていたからな。
君には悪いことをした。」
と、少し表情を曇らせた。