第3章 『月野大社』に通う(1日目)
「つっきーせんぱーい!」
と私を呼んで駆けてくる男の子は一つ年下の神無月郁くんだ。
私と神無月くんが出会ったのは、ある日のお昼頃のことだった。
その日は、講義が午前中のみだったため帰ろうとしていたら、ベンチに座って一生懸命足の血を止めようと奮闘していた。
光「どうしたの?大丈夫?」
郁「あっははは.....。トレーニングしてたら派手に転んじゃって....。どうしようかなぁって悩んでたところです。」
光「ちょっと待って?絆創膏あるかも。」
と鞄の中をがさごそ漁っていたら、見つけた。
光「あった!今貼ってあげるから動かないで?」
郁「へ?わざわざありがとうございます....。」
と素直に足を出してくれた。
光「消毒液なくてごめんね?
よしっ!付けれた!何のサークル入ってるの?」
郁「あぁ....陸上サークルです。高校の時も陸上部に入ってて....走るのが好きなんです!」
光「そうなんだ。お大事にね?」
郁「はい!わざわざありがとうございます!今度お礼したいんで連絡先教えてくれません?」
というのが神無月くんと私の出会いだ。それからはよく陸上サークルの練習に顔を出すようにしている。
郁「また来てくれたんですね!嬉しいです!」
光「いつもサークルを頑張っている神無月くんに差し入れだよ?」
と箱を開けた。
郁「うわぁ!美味しそう!」
光「カップケーキを手作りしてみたの。良かったら食べて?」
郁「良いんですか?いただきます!」
パクッ
郁「う〜ん!すっごく美味しい!」
と何故か私にも差し出してきた。
光「え?私は味見したから良いよ?
神無月くんが食べて?」
郁「良いから!早く口開けて?アーン?」
光「あっあーん...」
と言われた通りに口を開けた。
光「モグモグ....」
郁「どうですか?自分の作ったカップケーキのお味は?」
光「上出来です!二人も喜んでくれるかも!」
郁「あぁ....残りは渡す人たちの分だったんですね。ってことは俺が最初の一人?」
光「そうなるね。」
と言うと神無月くんは何故か嬉しそうにガッツポーズをした。