第2章 その感情の正体は
〔あなたside 3〕
そんな事があってから、祖父と祖母に守られて生活していた私は、高校を全寮制の女子高にした事を、二人は寂しそうに、でも安心したような顔で送り出してくれた。
二人には心配や迷惑をたくさんかけてしまった。
いつか、恩返しをすると二人に約束し、私は女子高で三年間静かに平和に過ごした。
そして、今の会社に就職して、緊張の中、祖父以外で始めて私が触られて平気な人を見つけた。
その人は目の下に隈を作って、いつも疲れた顔をしていて、愚痴を零しては課長に仕事を押し付けられている、見ていて可哀想になる人。
不幸体質とはこういう人の事を言うんだろう。
最初から陰気な雰囲気を持っているのに、優しく笑って、癒しオーラを持っていて、私のパーソナルスペースに無闇に入って来る事も、触れて来る事もなく、いい距離を保ってくれる。
文句を言いながらも、仕事をしっかりこなしていて、尊敬出来る先輩だ。
観音坂独歩。この不思議な先輩と仲良くなるのに、そう時間はかからなかった。
そして、私は出会う。
私みたいな陰な人間とは正反対に、明るく煌びやかな世界で生きる男に。
「どっぽちーんっ!」
明るい声が響く。
金色の髪と、無邪気な笑顔を輝かせながら走って来る男が目に入り、私は独歩さんの後ろに隠れる。
こういう時、自分は背が低くて小柄でよかったと思う。
けれど、その人――伊弉冉一二三さんも女性恐怖症らしく、少しだけ親近感みたいなものを覚えたけれど、すぐにその感情もなくなった。
女性恐怖症のわりに、やたら私に話しかけて来る。
わざと彼に分かりやすいように、あからさまに嫌な態度取るけれど、彼はめげなかった。
少したどたどしいけれど、一生懸命話しているのは分かる。
彼は、一体何がしたいんだろう。
仲間意識でも持たれたんだろうか。
それは、ちょっと困る。
職場の先輩に無理やり連れられて行ったホストクラブ。
彼は驚きに目を見開いて、私を見下ろした。
独歩さんから、彼がホストをしているというのは聞いていた。
私には縁がない世界だと思っていたのに、何だろうか、この状況は。
接客業だから、お金を落としてもらわないといけないからと言うのも分かる。