第6章 偽の彼女
諦めるのを諦める。
それは何処か簡単なようで、とても難しい事だった。
苦しみに耐え、相手が他の男といるのを黙って見ていないといけない。
だけれどもしかしたら。傑が言うように… リンを好きでいる事を辞めるよりは、よっぽど楽なのかもしれない……
七海からリンを奪いたいわけじゃない。
七海の事だって信頼のおける後輩だと思っているし、仲だって悪くないつもりだ。
だけど…
アイツの笑顔をただ側で見ていたかった。
アイツの笑い声を隣で聞いていたかった。
一番近くにいられる存在は俺じゃないかもしれないけれど。
それでもアイツにとって俺が特別で大切な人間の1人だと言う事は、聞かなくても分かっている。
今はそれだけで十分なのかもしれない。
ただひたすらに、俺がアイツを好きでいる事は…
誰にも止める事なんて出来ないのだから。