第11章 初夏の乾き
高専に入学して、三度目の夏が来た。
「いっくよー」
「私本気で投げるからね!」
夏の日差しが強いグランドで、傑は消しゴム、硝子はシャーペン、私がじょうぎを一斉に悟に向かって思い切り投げつける。
そしてそれらは、悟に触れる直前…硝子の投げたシャーペンと私の投げたじょうぎだけがピタリと止まり、傑の投げた消しゴムがコツンと悟の額へぶつかる。
「うん、いけるね」
落下していく文房具達を両手でパシっと取る悟はニヤリと笑った。
「げ、何今の」
「術式対象の自動選択か?」
「うわぁ、すご!」
「そ、正確に言うと術式対象は俺だけど」
一年前からよく悟が一人で色々練習してたのは知ってたけど。最近はそれが特に凄かったように思う。
「今までマニュアルでやってたのをオートマにした。呪力の強弱だけじゃなく、質量 速度 形状からも物体の危険度を選別できる。これなら最小限のリソースで無下限呪術をほぼ出しっぱにできる」
「出しっぱなしなんて脳が焼き切れるよ」
眉間に皺を寄せた硝子が強い口で言葉を放つ。
「自己補完の範疇で反転術式も回し続ける。いつでも新鮮な脳をお届けだ」
「ほわー、難しくて良く分かんないけどすごいね」
「まぁリンには難しいかもな。前からやってた掌印の省略は完璧、赫と蒼それぞれの複数同時発動もぼちぼち。あとの課題は領域と長距離の瞬間移動かな」