第2章 クローゼット
「ふんふんふんふ、ふんふーん♪」
お風呂から上がって、鼻歌混じりにボディクリームを体に塗りこむ。風邪をひかないよう肩まである髪をドライヤーで入念に乾かし、歯磨きとフロスを終えた私は、洗面台の前から部屋へと戻った。
「はぁー寒っ」
古い木造アパートはお風呂から上がった瞬間から体が冷え出す。ピッとリモコンのボタンを押してエアコンの設定を1℃上げた。
折り畳み式のローテーブルにスタンドミラーを置いて、コスパのいいオールインワン化粧品で顔をお手入れする。
「ふんふーん♪」
鼻歌を再び口ずさみながら、テレビ横のデジタル時計に目をやると、右端の数字がちょうど0に変わった。
日曜日の23時50分。いつもの時間だ。もうすぐ月曜に日付が変わろうとするこの時間帯、決まって私はベッドに潜り込んで、スマホをいじっている。
後は寝るだけっていう万全の状態で待機する。あと10分で少年ジャンプの最新号が読めるのだ。
それまでの間、手持ち無沙汰なので、私はSNSアプリを立ち上げて呪術廻戦ファンアートを眺めた。
それから、私の最推しであるナナミンこと七海建人を検索キーワードに打ち込み、その勇姿を漁りまくる。